営業担当従業員の架空請求書の発行は詐欺罪に問われる!?

会社の営業担当の社員が、請求書を偽造し、会社から金を騙し取り、払戻金を私的に流用したり、架空売り上げの売掛金の入金に利用するといったケースがあります。請求書を偽造する行為はどのような罪に問われるのか、会社としてこうした請求書の偽造を見抜く方法はあるのか、こうした点について解説いたします。

1.営業が、経費や売り上げを架空請求したらどうなるの?

営業担当社員が請求書を偽造して、架空請求を会社に対して行うなら次の3つの罪に問われる可能性があります。
①私文書偽造罪
②詐欺罪
③業務上横領罪
なぜ、こうした罪状が適用されるのか、その理由や罰則をさらに詳しく説明します。

①私文書偽造罪

会社の請求書を偽造したり、変造(内容の改ざん)するので、私文書偽造罪に当たります。
公文書偽造の公文書は、健康保険証、運転免許証、住民票など国や地方公共団体、公務員が作成する文書です。私文書は、公文書以外の権利や事実関係を証明する文書のことで、請求書、契約書、委任状などがその代表例です。

私文書偽造の罰則は、有印私文書偽造の場合、3カ月以上5年以下の懲役、無印私文書偽造の場合、1年以下の懲役もしくは10万円以下の罰金です。

②詐欺罪

偽造した請求書で会社を騙してお金を得て、会社に損害を被らせているということで詐欺罪が適用されます。

詐欺罪の罰則は、10年以下の懲役です。罰金刑はありません。詐欺行為で得た金品はすべて返還しなければなりません。
しかし、営業担当の社員の横領や詐欺に長年気づかず、横領した金額が多額になり、発覚後も返還されるのが難しくなるというケースもあります。

③業務上横領罪

偽の請求書を使って会社のお金を着服したので、業務上横領という罪が適用される可能性があります。

業務上横領の罰則は、10年以下の懲役です。罰金刑の規定はなく、罪が確定すれば刑務所に収監されます。

営業担当により架空請求が行われる理由

会社の仕組みとして営業担当の社員のみが、直接特定の取引先とやり取りするので、他の部署や他の担当者は、取引先と連絡することがほとんどなく、取引の内容や状況を把握できないという状況があります。
こうした会社の仕組みにより、架空請求や横領が発覚しづらくなっています。

請求書をねつ造して架空請求を行う事例としては、営業の売り上げノルマを達成するために、営業担当が存在しない架空の売り上げを計上し、売掛金を入金しなければ、それが発覚するので、カラ出張や存在しない物品や資材の購入などで請求書をねつ造し、それで得たお金を架空の売り上げの売掛金に充てるというものがあります。

2.営業の架空請求した経費を見抜く方法はある?

営業担当の関連した架空請求を見抜くための効果的な方法は「取引先に残高確認状」を送付し、経理部がそれを回収するという方法です。
この方法がなぜ効果的なのかを、残高確認状の説明と共にもう少し詳しく説明します。

残高確認状とは

残高確認状は、企業が、取引先等に対して、自社の債権や債務の残高を確認するために送付する書面のことです。
上場企業では会計監査の一環として実施されています。非上場企業でも、売掛金や買掛金等の管理のため、一定規模以上の取引先等に対して残高確認を実施することがあります。取引先と共通の認識で計上されるべき勘定科目について、四半期や半期などにお互いの残高を一致させておきましょうという意味合いで送付されます。

例えば、自社と得意先との取引において、自社で計上される売掛金の残高と仕入先で計上される買掛金の残高は基本的には同じです。
それぞれの会社の経理作業の時期により、金額に多少の違いが出ることもありますが、経理作業の時期を調整すれば一致します。

この残高確認状を受け取った得意先は自社の買掛金の金額を残高確認状に記載して、直接経理部に返送します。

架空の売り上げだけでなく、事務処理上のミスなどがあれば、金額が一致していないので問題が発覚するというわけです。
両社の金額が一致しない場合、取引の計上漏れや入金の確認漏れなど何らかの問題があるということなので、調査が開始されます。

この調査により、架空の売り上げや、それを隠蔽するための架空請求などを発見できます。

残高確認状を利用することのメリット

営業担当の部署や社員を通さずに、両者の経理部同士で行える文書のやり取りなので、架空の売り上げ、それを補填するための架空請求のチェック、防止につながるというメリットがあります。
会社の不正を取引先の会社に協力して行ってもらうということになります。

残高確認状を取引先に送付するという方法は、架空の売り上げやそれを隠蔽するための架空請求を防ぐためだけでなく、経理上の処理の間違いもチェックできるという効果があります。

3.もし営業の架空請求を見つけたらどうしたらいい?

その問題の解決と、今後同じような問題が生じないようにするための体制作りが必要です。
問題解決の方法としては、以下の2つの方法が考えられます。
①架空請求で得た金額の返還
②不正請求を行った従業員の解雇
この2つをもう少し詳しく説明します。

①架空請求で得た金額の返還

会社側は被害額の全額返還を請求できます。返還が遅れる場合は年利5パーセントの遅延損害金も請求できます。
取引先の会社に迷惑をかけ、それにより取引が解消された場合などは、それにより生じた損失額も請求できるでしょう。

②不正請求を行った従業員の解雇

横領を理由に従業員を解雇したとしても、会社側は権利の濫用とはなりません。過去の判例では、数十万円程度の横領であったとしても、その従業員の解雇が認められた事例があります。
しかし、該当するとされる社員が、横領の犯人としてまだ立件されていない段階で、解雇してしまうなら、その懲戒解雇は不当とみなされることがあります。

刑事告訴を恫喝の理由しない

架空請求を行った社員に対し、刑事告訴はせず、示談にする。そのかわり示談金を支払うようにと交渉する場合もあります。
しかし損害額より高額で、法外な示談金を要求し、「払わないなら刑事告訴するしかない」といったことを伝えるなら、恐喝とみなされる可能性もあります。
被害者側の会社には、告訴する権利がありますが、刑事告訴をしない代わりに、法外な示談金を要求するというのは賢明な方法ではありません。
会社内での不正を発見した場合は、顧問弁護士などと相談し、警察に通報するかどうかを判断できるでしょう。

営業の架空請求まとめ

会社の営業担当の社員が、その立場を利用し請求書を偽装し、架空請求を会社に対しておkなうというケースがあります。
しかし、会社内で不正を見抜くチェック体制を確立したリ、取引先に「残高確認状」を記載してもらうことで、架空の売り上げを見抜いたり、それを隠蔽するための架空請求を調査したりすることができます。
会社内にこうしたチェック体制や不正を許さない姿勢が浸透していれば、社員のコンプライアンス遵守の精神も強化され、不正のないクリーンな企業イメージを維持できるでしょう。

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